私のお気に入りの居酒屋さんがあります。仙台に住んでいる限りは通いたいお店です。10回通ってもまだ虜。『鶏が好きだと酒びたい』は、出汁と日本酒が織りなす大人の楽園なのです。
鶏が好きだと酒びたい
仙台の夜を、心から満たしてくれる一軒の店があります。その名も「鶏が好きだと酒びたい」。青葉区中央にある一見すると大衆酒場の様な造りのお店です。外から店内が見えるので安心して利用出来ます。こちらのお店は日本酒好きには堪らない仕組みの飲み放題があり、とても気に入っています。
このお店の暖簾をくぐるのは、今回で記念すべき10回目。すっかり私の心を鷲掴みにして離さない、特別な場所です。そして今夜は、この素晴らしい体験をどうしても分かち合いたくて、妻を誘っての訪問。開店と同時に入店しているのでお店には私たちだけでした。





「ここの空気は落ち着く」と私は唸ります。このお店には、ただ美味しいだけではない、人を惹きつける温かな魅力が満ちているのです。
扉の先に待つのは、日本酒好きの夢が詰まった宝箱があります。この店の扉を開けるときの高揚感は、何度味わっても色褪せません。なぜなら、そこには日本酒好きの夢が詰まった、巨大な冷蔵庫が鎮座しているから。

店長さんの確かな目利きで全国から集められた、個性豊かな日本酒たち。これを「セルフ飲み放題」で、自分のペースで、好きなだけ楽しめる。これ以上の贅沢があるでしょうか。「今日はどんな一本に出会えるだろう?」そんな期待に胸を膨らませながら、店長におすすめを尋ねるのもまた、ここでの楽しみ方の一つです。
私は迷わず90分の飲み放題を、妻はソフトドリンクを。まずはキンキンに冷えたサントリーの生ビールで、最高の夜の始まりに乾杯!


この店の料理の根幹を成すもの、それは丁寧に、じっくりと時間をかけて引かれた「鶏出汁」です。全ての料理のベースに流れるこの黄金色のスープが、ありふれた居酒屋料理とは一線を画す、深く、優しい味わいを生み出しているのです。
その真髄を味わうべく、まず注文したのは「鶏出汁おでん」。箸をすっと入れるだけで、その柔らかさが伝わる大根。一口含めば、鶏の凝縮された旨味がじゅわっと溢れ出します。その上には、とろろ昆布。この海の風味が、鶏出汁の輪郭をさらにくっきりとさせてくれる名脇役です。つるりとした玉こんにゃくにも、もちろん出汁の味は芯まで染み渡り、噛みしめるたびに旨味が弾けます。そしてこの日の特別メニュー、鶏砂肝。コリコリとした食感を残しつつも、出汁を吸ってしっとり。定番にはない出会いに感謝です。

東北、宮城の豊かな食材を味わえるのも、この店の大きな魅力です。運ばれてきたのは、鮮やかなオレンジ色が美しい三陸産の「ホヤ刺し」。この独特の潮の香りと、甘み、苦みが複雑に絡み合う味わいは、まさに大人のための珍味。これを一口含み、キリリと冷えた日本酒を流し込む…たまりません。これぞ東北の味覚の醍醐味です。

すると突然、威勢のいい声と共に、お兄さんが大皿いっぱいの牡蠣を抱えて登場!このライブ感溢れる「牡蠣の売り歩き」も名物。もちろん一ついただき、レモンをきゅっと搾って一口で。ぷりっぷりの身から溢れ出す、濃厚でクリーミーな海の恵み。言葉を失うほどの美味しさです。

ここで日本酒は、高知の司牡丹『一蕾(ひとつぼみ)』へ。爽やかな香りとキレのある後味が、海の幸との相性抜群です。

香ばしい香りが漂ってきます。まずは希少な「白レバー串」。外はカリッと、中は信じられないほどトロリと滑らか。レバー特有の臭みは一切なく、濃厚な旨味と甘みが口の中でとろけます。妻と一本ずつ、思わず顔を見合わせて頷いてしまいました。

熱々の鉄板で運ばれてきたのは「茄子の鶏味噌チーズ焼き」。とろとろになった茄子に、甘辛い鶏味噌、そして香ばしいチーズが絡み合う、反則級の一品。鶏出汁で伸ばしたであろう鶏味噌が、くどさのない上品な味わいを生み出しています。

この濃厚な一皿に合わせるのは、山形の「くどき上手 純米大吟醸 Jr.の未来」。その名の通り、フルーティーで華やかな香りが、味噌とチーズの風味を優しく包み込み、まさに「くどき上手」なマリアージュを奏でます。

王道の「鶏モモ串」に、栃木の「仙禽モダン 壱式 火入」を。ジューシーな肉汁滴る鶏モモを、仙禽の持つモダンな酸味と甘みがキリリと引き締めます。


ここで一息、「夏野菜のお浸し」を。つるむらさきのぬめり、オクラの食感、そして茗荷の爽やかな香り。ここにももちろん、あの絶品鶏出汁が使われており、野菜の青々しい風味を優しくまとめていました。

宴もたけなわ。〆には「仙台味噌の焼きおにぎり」を。表面はカリッと香ばしく、中はふっくら。仙台味噌の豊かな風味が、日本人で良かったと思わせてくれる、どこか懐かしくも完璧な〆の一品です。

最後の一杯は、「杜來 純米吟醸 Hanasayaka」。その名の通り、花の蜜のような上品な甘やかさで、この素晴らしい夜を締めくくるのにふさわしい一杯でした。

ほろ酔い加減で席を立つと、店員さんから差し出される小さなカップ。中には、温かい鶏スープが。この店の魂とも言える黄金色のスープが、火照った体に優しく、深く染み渡っていきます。最後の最後まで、この心遣い。

10回訪れても、毎回新しい感動がある。鶏と出汁、そして日本酒への深い愛情に満ちたこの場所は、私にとって仙台で一番のパワースポットなのかもしれません。日本酒の飲み放題と、東北の多彩な料理。何を食べても美味しい居酒屋さんでした。ご馳走さまでした。
お店情報
店名 鶏が好きだと酒びたい
住所 宮城県仙台市青葉区中央2丁目11-13 ユーメントビル1F
電話番号 022-263-0094
定休日 設定なし Instagramでお知らせ
営業時間 全日: 17:00~24:00 (お料理L.O. 23:00 お飲物L.O. 23:30)
備考


